(2)オ−ロラの形

 オーロラ下端の高さがほぼ一定であることが確かめられると,観測地点からオーロラまでの距離も測定できるようになり,一つひとつ複雑に見えていたオ−ロラの形は,観測地点の距離に依存していることが明らかになったのです。図1に示すように,オーロラの基本形はカ−テン状で,コロナ型オ−ロラは天頂に現れたカ−テン状のオ−ロラで ,遠方のオーロラは地平線から湧き出るように見えることが明らかになった。

        

           図1 オーロラの形          図2 オーロラの基本形と活動度による変化

 上;天頂から約100km離れた距離のオーロラ,     (上からa,b,c,dの順に活発になる)

 下;天頂近くに出現したコロナ型オーロラ       a;縞模様もはっきりしない静かなオーロラ

                              b;縞模様がはっきり見えてくる

                              c;カーテンが波打つようになる

                              d;反物を巻き込んだようになる             

 オーロラカーテンは,数百kmの高さをもち,幅は地磁気極を取り囲むように ,東西方向に数千kmに及んでいますが,厚さは500mから1kmと極端に薄いことも明らかになっています。日本など低緯度で見られる暗い赤いオーロラでは見えませんが,高緯度で見られるカーテン状の明るいオーロラは,図3に示しすような下端から上端までまっすぐ延びた細い筋状構造をもっているのです。オ−ロラ活動が活発になり,激しく動くようになると,図4に示すように,オーロラカーテンは一枚ではなく,複数枚のカーテンが波打つように現れてきます。さらに活動が活発になると,オーロラカーテンの襞が激しく変動し,反物を巻きこむようにさえ見えてくるといわれています(図5)。図6に,天頂方向で観測されたコロナ型オーロラの例を紹介しました が,はっきりした筋状構造が見えています。

 

  オーロラカーテンに見られた細い筋状構造は,1本1本の磁力線に対応していることが明らかにされ,オーロラは磁力線に沿っての発光現象であることがわかったのです。静かな一枚のカ−テンの様に見えるのは,経度方向に広がる同じ地磁気緯度面の磁力線に沿って光っているオーロラであり,波打ったり,反物を巻き込んだようにと変化するのは,経度方向に同じ地磁気緯度面からずれた磁力線に添って発光することに対応していると考えられています。オ−ロラカーテンが激しく変動するのは,発光する磁力線面が激しく移動していることに対応していると解釈されているのです。      

 地球磁場の中での荷電粒子は,地球磁力線の周りを螺旋運動しながら,両半球の反射点(Mirror Point)間を往復運動しているので(図7),理屈の上では,北半球でオーロラが光っている磁力線に沿った南半球の地点(磁気共役点と呼ぶ)でもオーロラが観測されることになるはずです。現在,人工衛星による地球スケールのオーロラ観測によって,南・北両半球でほぼ同時にオーロラが光っていることが確かめられています。

  磁力線の周りの螺旋運動の半径は,磁場の強さや,イオンの種類やエネルギーによっても違いますが,地球磁場を想定し,電離層領域で観測されるエネルギーを持った陽子で見積もってみると,約2kmとなります。同じ条件の電子の回転半径を見積もると,1.2m程度になるので,オーロラカーテンの厚さは陽子の螺旋運動の回転半径に近いことがわかります。

 このような研究から,大きなエネルギーをもった荷電粒子が電離層まで入射できる条件を満たした磁力線が,一枚の面を形成するように東西方向に広がっているところでオーロラは発光していると考えられているのです。