(6)オゾン層の誕生と進化

 

 オゾンは酸素からつくられるので,オゾン層ができるためには空気中に酸素が存在していなければなりません。地球の空気には約20%の酸素が含まれていますが, 他の惑星の大気成分は二酸化炭素が大部分で,酸素はほとんど存在していません。

 研究の結果,誕生時の地球大気は他の惑星と同じように大部分が二酸化炭素だったことがわかってきました。その後,地球には海洋が誕生し,水中で生命が誕生したため,空気の主成分が二酸化炭素から窒素と酸素へと変遷してきたのだと考えられているのです。空気中の酸素は,主として水中に存在するようになった緑色植物(緑藻類)の光合成によってつくられ,図 1に示したように,地球の歴史とともに増加してきたのだと考えられているのです。酸素が存在するようになると,太陽紫外線の作用によってオゾンもつくられるのです。図1で酸素に比べ,オゾンの方が急速に増加しているように描いてあるのは,酸素が少ないほど,オゾン生成率が高いためです。

 地球の誕生は約46億年前で,地球上に生物が誕生したのは約36億年前とも言われています()。誕生した生物を有害な太陽紫外線から守ってくれるのは水だけで,水深10m程度必要だったといわれています。光合成を行う緑色水中生物によってつくられた酸素が少しずつ空気中にしみだし,空気中の酸素量が現在の 100分の1程度まで増えると,生物の生活できる範囲は水深1mまで広がったと考えられています。

 現在量の 100分の1の酸素濃度はパスツールレベルと呼ばれており,生物のエネルギー獲得方式が発酵から,数十倍も効率的にエネルギーを獲得できる呼吸に変わるレベルで,約6億年前のカンブリア期の生物の爆発的な進化が見られた時期だとしています。今から約 4億2千年前頃には,空気中の酸素濃度は現在の10分の1程度まで増え,現在とあまりかわらないオゾン層が形成され,地表面も有害な紫外線から守られる環境になり,陸上生物が存在するようになったと考えられてい るのです(図1)。

 約36億年前,水中で誕生した光合成を行う緑色植物(緑藻類)が30億年以上の年月をかけて空気中の酸素をつくり続け,ようやく空気中にオゾン層をつくりあげたのです。地球が誕生してから,陸上生物が生活できる地球環境になるまでに40億年以上の歳月が必要だったということです。

 陸上緑色植物が存在するようになると,光合成によってつくられた酸素は全て大気中に放出されるので,大気中の酸素の増え方は速くなり,次第に地球表面は生物にとって,生活しやすい環境に変わってくる。水中動物も生活圏を陸地まで広げてくるようになる。酸素の生産者であった緑色植物も,枯れてしまうと酸素の消費者に回ってしまうし,動物は全て酸素の消費者です。現在の空気中の酸素やオゾンは,生物に限らず,海も土も地球上の全てが関わった,生産と消費のバランスの上に維持されているのです。今問題になっている,人間活動が関わったオゾン層破壊は,これまで維持されてきた生産と消費のバランスを脅かし始めている問題だといえるでしょう。