(A)日本の四季

    

 (1)変化に富んだ日本の四季

日本とイギリスはユーラシア大陸の東側と西側に位置する周囲を海に囲まれた中緯度の島国です。日本は四季折々の変化に富んでおり,地域差も非常に大きいのに比べ,イギリスの季節変化は小さく,地域差も小さいことが知られています。

日本とイギリスの気候がどのように違っているのかを直感的に比較できるように,日本とイギリスの中から,代表地点を選び「クライモグラフ」をつくって比較してみます。 図1の左が日本のクライモグラフで、右がイギリスのクライモグラフ です。グラフの横軸と縦軸を比べただけでもわかるように、日本はイギリスに比べて降水量も気温も季節変化が大きいのです。

 日本の代表地点として,北から札幌,東京,那覇と,豪雪地帯の代表として高田,降水量の多いことで知られている尾鷲を選んであります。 イギリスの代表地点としては,北の北海に面したアバデイーン,中央に近いマンチェスター,南部のロンドンと,最南端に近いプリマスを選びました。 日本の5地点は,クライモグラフの中に広く分布しているのに,イギリスの4地点は,グラフの狭い範囲にこじんまりと纏まっており,日本の季節変化はイギリスの季節変化に比べて変化に富んでいることもわかります。

(注)クライモグラフ;横軸に降水量,縦軸に気温をとって,1月から12月までの気温と降水量の平均値を散布図で表したもの

 

            図1 クライモグラフで比較した日本の気候(左)とイギリスの気候(右)の違い

 日本の気候が変化に富み、地域差が大きいのは, 東は太平洋,西は日本海を挟んでアジア大陸が存在しており,脊梁山脈が日本列島を太平洋側と日本海側に2分していることや,北西季節風、温帯低気圧、梅雨前線、台風、秋雨前線など,季節特有の現象だと考えられています。

季節変化も地域差も小さいイギリス との違いは,ユーラシア大陸の東側に位置するか西側に位置するかと,日本には脊梁山脈があることだけです。地球スケールの空気の動きが西から東に向かっていることと深くかかわ り、このような違いが生じるのです。

 (2)四季の区分 

いつから春かと聞かれると,立春,あるいは春分と答えるのが一般的だと思います。これは太陽の黄道上の位置に対応した決め方です。春分と秋分は昼と夜の長さが等しくなる日で ,夏至は昼の長さが最も長く,冬至は昼の長さが最も短くなる日です。立春は冬至と春分の真ん中の日として決めたものです。

 下の表1に ,中国で工夫された24節気による区分から,西欧流の区分,慣習的な区分,日本で使用している細分をまとめました。細分の日付の根拠についてはよくわかりませんが,初夏と晩夏の間に梅雨が ,初秋と晩秋の間に秋雨が加わった,生活感のある日本独自の季節区分といえるでしょう。生活感としての四季の区分には,日付はそれほど意味のあることだとは思いません。

     表1 いろいろな四季の区分

区分

古代中国

現在(西欧流) 

慣習的

 細分した自然季節区分(日本)

立春から立夏の前日まで

春分から夏至の前日まで

  3,4,5月

初春(3月1日〜3月17日),春(3月18日〜5月4日), 晩春(5月5日〜5月21日)

立夏から立秋の前日まで

夏至から秋分の前日まで

  6,7,8月

初夏(5月22日〜6月10日),梅雨(6月11日〜7月16日),夏(7月17日〜8月7日),晩夏(8月8日〜8月20日)

立秋から立冬の前日まで

秋分から冬至の前日まで

9,10,11月

初秋(8月21日〜9月11日),秋雨(9月12日〜10月9日),秋(10月10日〜11月3日) ,晩秋(11月4日〜11月25日)

立冬から立春の前日まで

冬至から春分の前日まで

 12,1,2月

初冬(11月26日〜12月25日),冬(12月26日〜1月31日),   晩冬(2月1日〜2月28日)

(注)立春,立夏,立秋,立冬は,それぞれ24節気の1つです。次のページに24節季72候を載せました。参考にしてください。