第U部;地球温暖化関連の新しいニュースや情報を随時紹介します
2月9日;1月29日、NHKクローズアップ現代で、「南極大陸が融ける?〜温暖化調査 最新報告〜」が取り上げられ、 続いて1月31日には河北新報や,SANKEI EXPRESS に「北半球の積雪面積が急減」しているとの記事が掲載されました。
どちらも地球温暖化が進んでいることを示す、新しい視点として注目すべき指摘だと思うので概要を紹介しておきます。詳細は、NHKのホームページや該当する新聞記事で調べてください。
NHKクローズアップ現代「南極大陸が融ける?〜温暖化調査 最新報告〜」(2013年1月29日)
日本の調査隊が「前人未到のセールロンダーネ山地(氷の上に山の頂が顔を出す南極でも数少ない場所)で、およそ300ヶ所にわたり岩石を採取して日本に持ち帰り 、詳しい分析を行った結果、少なくとも3ヶ所で、1万3,000年前、9,000年前,2,000年前に氷が消えていたことがわかったのです。
それまで、一年中氷点下の南極ではたとえ温暖化しても氷が大きく減少することはないだろうと考えられていたので、全く予想外の発見でした。 最近、いろいろな手法で調べられている過去10万年近くの気温変化と比べ、氷が消失した時期は数千年かけてゆっくりと起こっている気温の上昇を反映していると考えられるというのです。
気温上昇によって南極の氷がなぜ減少するのか、世界の研究者がその謎解きに挑戦している例も紹介されています。一例として、オーストラリアの研究者ヴアン・オーメンが、「氷の下に横たわる南極大陸の地形が氷の変動の鍵を握ると考えている」という記事が、私には非常に興味深いものでした。
南極大陸は最大で約5,000メートルの氷に覆われており、 その下に隠された本当の地形は謎に包まれてきたのですが、ヴァン・オーメンさんは、アメリカやイギリスの研究者と共同で南極の地形の大規模な調査を5年前から始め 地形図作りを続けてきました。
調査を繰り返して明らかになった南極大陸の最新の地形データは、「氷の下に横たわる南極大陸の地形は 下図に示すように、面積にしておよそ45%(図で水色で示した領域)が海水面よりも低い場所にある 」ということでした。
氷はすべて南極大陸上にあると考えられていたのが、「45%近くの氷は大陸上ではなく、海水面に浮いており、こうした場所の氷は不安定で急激に融ける可能性がある」のです。
海水面より低い地形が多いことで、南極全体の氷がどのような影響を受けるのか。 東京大学の阿部彩子準教授はスーパーコンピューターでシミュレーションし、温暖化によって現在、南極にある氷のうち実に60%がとけやすい状態にあることを示しています。
海水面より低い地形が多いと、どのようなメカニズムで南極大陸の氷が融けだすと考えられるのか・・・、 等についても興味ある解釈が説明されています。
北極海の氷が融けるのと違い、南極大陸の氷が融けだすと、直接海水面を上昇させることになるので、地球に深刻な影響を及ぼす危険があることも指摘されています。
他にも興味深い内容が沢山書いてあります。是非参考にしてください。
NHKのホームページから「2013年1月29日のクローズアップ現代」を検索すると、図と文章による詳しい説明を見ることができます。
北半球、積雪面積が急減 (SANKEI EXPRESS 2013/01/31 )
米国の地球観測衛星による北緯60度以北の土地の画像を基に、カナダ環境省のチームが1967〜2012年の4〜6月の間に雪に覆われている場所の面積などを調べた 結果です。
1979年から2012年の6月の北半球の積雪面積の経年変化を示したのが右図(SANKEI EXPRESSから転載した)で、10年毎に平均で21.5%づつ減少しいたと報告しています。図中で海表面積と書いてあるのは北極海の6月と9月の海表面積の経年変化で、 10年毎の変化率は6月が3.8%、9月が10.8%と言うことで、高緯度陸地の雪に覆われている面積がいかに急激に減少しているかがよくわかります。
チームによると、この地域の年間平均気温は10年間で0.3℃〜0.5℃のペースで高くなっており、これが雪に覆われた面積の減少の原因になっていると推論しています。
南極大陸と北半球高緯度地方に存在している雪氷は、地球上に存在している雪氷の大部分を占めています。大陸上の雪氷の減少は、減少した分だけ海水を増加させることになります。
このことが、北極海の雪氷が融けることとの大きな違いです。ここで紹介した二つの研究結果は、海水面上昇が近い将来に大きな問題になる 可能性が強まったことを指摘しているといえます。
地表面の雪氷の減少は地球に降り注ぐ太陽光の反射率を減少させ、その分地球温暖化を増大させるという「悪循環」ももたらします。感心を持つべき問題指摘だと思いますんで、オリジナルに戻って是非一読してください。
12月29日;自民党、温室効果ガス排出量25%削減目標を見直すことを示唆
茂木経済産業相と石原環境相は28日、地球温暖化を防ぐための温室効果ガスの削減に関して、民主党政権が掲げた「2020年までに1990年比で25%削減する」との目標を見直す考えを示した。
東日本大震災後、殆どの原子力発電が停止し、当面の電力供給は火力発電に依存することは避けられない現実を踏まえ、25%削減目標について「達成は厳しい」と指摘。新たな目標については、「具体的な工程表も決めて、実現可能性が高い数値目標を世界に示さないといけない」と述べた。
石原環境相は、国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)がポーランドで開かれる来年末までに新たな目標を決定すると述べています。昨年のCOP17で2,013年以降の京都議定書に参加しないことを表明したにも関わらず、今年のCOP18に参加した長浜環境相が、2013年以降の具体的な削減策を説明しなかった(正確には、日本では議論すら進んでいない)ため、世界各国から批判を浴びたことを考えれば当然なすべきことだと思います。
言っただけにならないことを期待します!!!。
12月19日;どうなる、地球温暖化問題?。COP18では対立だけが目立ち、温室効果ガス削減に向けた議論は遅々として進 まなかったようです。
3年前には、鳩山総理が2,020年までに温室効果ガスを25%削減する目標を公表し、各国の注目を浴びたにもかかわらず、昨年のCOP17では、2,013年以降京都議定書に参加しないことを表明 、今回のCOP18でも 、長浜環境大臣の演説では2,013年以降の具体的な削減策等に言及しなかったこともあり、世界各国の環境NGOグループから、「最も交渉に後ろ向きな対応をした」国や地域に 、皮肉を込めて贈る「化石賞」を2回も贈られたと伝えられています。
「京都議定書」を成立させたと自負し、「世界の温室効果ガス削減を先導する」と意気込んでいた日本が、今や「削減交渉に最も後ろ向きな国」 として烙印を押されてしまったのです。
インターネットの新聞記事等を参考にして、COP18で議論された概要と日本の立場を紹介します。
<COP18>
2,012年11月27日から、およそ190の国と地域がカタールのドーハに集まり、温暖化問題を話し合う国連の会議、「気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18) 」が始ま り、先進国、開発途上国が争点ごとに対立し、合意は難航したが、「すべての国が参加する新たな枠組みの開始に向けた作業スケジュールを決めることなどを盛り込んだ、「ドーハ合意」を採択 」して12月8日閉幕した。
<議論の焦点>は、
▽先進国だけに温室効果ガスの削減を義務付けた『京都議定書』の期限が12月に迫っており、空白期間を作らず来年以降も『京都議定書』をどのように継続していくのか?
▽2,020年にすべての国が参加して始めることを確認した、新たな温室効果ガス削減の枠組みの議論をどこまで進められるか?
▽開発途上国への先進国の資金支援はどうするのか?
の3つでした。
<ドーハ合意の骨子>は、
▽『京都議定書』の延長は、2,020年末までの8年間とする。
ただし、日本やカナダ、ロシア、ニュージーランドのように、『京都議定書』の枠組みから離脱した国に対しては、クリーン開発メカニズム(先進国が技術提供した途上国で温室効果ガスを削減した分を先進国の削減分に含める制度)の使用を制限する。
▽2,020年から始める温室効果ガス削減の新たな枠組みの交渉スケジュールを盛り込んだ作業計画は、
「新枠組みの原案を15年5月までに提示するため、14年末に開かれるCOP20で原案の骨格をまとめる」ことだけでした。
▽開発途上国への資金支援はどうするのか?については、
先進国と途上国との利害が絡み、最も難航した問題で、「2013年末まで協議を続け、これまでの支援額を上回るように努力する」ということでまと まった。
<厳しくなった日本の立場>
環境省が2,012年12月5日発表した2,011年度の国内の温室効果ガス排出量は、前年度比3.9%増の13万7,000トンだった。福島第一原発事故後、各地の原発が停止し二酸化炭素排出量の多い火力発電に切り替えたことなどが理由だと述べています。 ほとんどの原発が停止している2,012年度の温室効果ガス排出量は、さらに増加している可能性があると予想されます。
2,010年度までは、 リーマンショックによって産業界が停滞したため温室効果ガス排出量が減少したことと、途上国への技術援助や資金援助によって途上国で削減した温室効果ガス排出量を日本の削減分に 加算することができたので、日本が京都議定書で約束した削減量を何とかクリアーできていたのですが、2,011年度、2,012年度については、かなり厳しい状態に置かれているのです。
最大の理由の一つは原子力発電を稼動できなくなったことで、さらに大きな理由は、COP18の会議で、2,013以降議定書に参加しない国に対しては、途上国 への技術提供で削減した温室効果ガス排出量を技術提供国の削減分に加えることを制限すべきであると決められたことです。これまで活用していた余剰排出枠の売買も、大きく制限されてしまったことも日本にとっては 大きな痛手です。
京都議定書でした約束を守ることができるのか、約束できなかった国にペナルテイ−を科すとは決まっていないにしても、これから大きな試練を迎えることになることは確かでしょう。
原子力発電を稼動できるかさえ見通せない現状では,2,013年以降,温室効果ガス排出量を削減する具体的な方法を議論することさえできない状態です。しかし、温室効果ガスを削減 することは世界の約束です。
参考資料
<2,011年の世界の温室効果ガス濃度は過去最高値>
世界気象機関(WMO)が2,011年12月までの世界の温室効果ガス観測データを解析し、2,011年の世界の温室効果ガス濃度は過去最高値を記録したと発表し ています。
下の図は、世界の空気中に存在している二酸化炭素濃度の1985年以降の年増加量(PPM)を示したものです。年による変動は見られますが、毎年確実に増え続けていることがわかります。京都議定書を締結した各国が削減努力をしているにもかかわらず増え続けている のです。
特定の国だけの努力では世界規模の温室効果ガス削減は不可能であることの証明です。議定書に加盟していない大量に温室効果ガスを放出している国の努力なしには、地球温暖化問題は解決しないことの証でしょう。
12月12日;気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)は,京都議定書の延長と,すべての国が参加する法的義務のある新体制に向けた「ダーバン合意」を採択し,閉会した。
南アフリカで開かれているCOP17は12月11日未明、2012年末で期限切れとなる京都議定書の温室効果ガス削減義務を5年間か8年間延長し,京都議定書で削減義務を負っていない中国や、同議定書を批准していない米国も義務を負う新体制づくりの行程表でも合意した。新体制は、新議定書も視野に入れた「法的拘束力を持つ枠組み」とし、新しい作業部会を立ち上げて議論を開始することになった。
日本はロシア、カナダと同じく削減義務の数値目標の設定を拒否する方針で、先進国に削減義務を課してきた地球温暖化対策の京都体制から離脱することになるが,京都議定書の批准国ではあり続ける。(朝日新聞 12月12日より,一部抜粋)
経団連の米倉弘昌会長は,「すべての主要排出国が責任ある参加をする国際枠組みが不可欠だ。COP17で道筋ができたことを歓迎する」とコメントを発表したとの記事もありましたが,京都議定書を主導し,民主党政権になって,前総理二人は日本は25%の削減を目指し,世界をリードするとまで言っておきながら,COP17では京都議定書の延長に最後まで抵抗し,削減義務を果たさないと宣言した姿勢は,いかにもわかりにくい。
京都議定書を主導したのは政治家で,経団連はじめ,経済界では到底無理であることを承知の上であることはわかっていましたが,日本の信用(特に政治家の信用)は落ちるでしょうね・・・・・。
12月9日;国立環境研究所が平成23年12月5日「2010年の世界の二酸化炭素排出量が記録的水準に上昇」したことを報告した。
報告の要旨は,
この研究成果をまとめた評価報告書は、2011年12月5日(日本時間午前3時)にNature Climate Change(英国気候変動専門月刊誌)電子版に掲載の予定です。
(注1) 地球環境変動にかかわる国際研究計画(IGBP, IHDP, WCRP, DIVERSITAS)の連携による「地球システム科学パートナーシップ(ESSP)」がスポンサーとなって2001年に発足した国際研究計画。グローバルな炭素循環にかかわる自然と人間の両方の側面とその相互作用について、自然科学と社会科学を融合した分析を実施し、国際的な炭素循環管理政策の策定に役立つ科学的理解を深めることを目的とする。
(独)国立環境研究所と豪州連邦科学産業研究機構に事務局が設置されている。
また,この評価報告書では,
「2010年において世界の二酸化炭素排出量増加に最も大きく影響したのは中国、アメリカ、インド、ロシア連邦及び欧州連合で、さらに新興経済圏からの排出量も依然として増加を続けている」ことを指摘し、(独)国立環境研究所(GCP)つくば国際オフィス事務局長のソバカル・ダカール博士は、「世界金融危機は世界経済を二酸化炭素大量排出への道から引き戻す機会であったが、実現されていない」と述べています。 また、2010年の大気中の二酸化炭素濃度が、少なくとも過去80万年の記録の中で最も高い水準である389ppmに達したことも判明しました。
Nature Climate Change(英国気候変動専門月刊誌)電子版から,1990年以降の世界の二酸化炭素排出量の経年変化と,世界の二酸化炭素排出量の増加に大きく影響している,中国,アメリカ,インド,ロシア,と日本の排出量の経年変化の図を下記に転載し,紹介しておきます。
<今まさに,南アフリカで,国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)が開催されていますが,来年期限切れとなる京都議定書以降の削減策の議論が難航し,会議は京都議定書を延長することを前提に進んでいるとも伝えられていますが,各国の利害が絡んでおり,どのような削減策が打ち出せるか,注目されるところです。>
12月14日;国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)は,京都議定書を離脱した米国,温室効果ガスの削減義務を負っていない中国 ・インドなどの新興国にも一定の削減を求める,新たな温暖化対策の骨格を「カンクン合意」として採択し、12月11日閉幕した。
決議案は,COP15で主要国首脳がまとめた「コペンハーゲン合意」に沿って米国や中国を含む85カ国が示した20年までの温室効果ガス排出量削減の目標・計画を,各国が「留意」するとしている。京都議定書のように義務が課されるわけではないが,国際社会に宣言することで,誠実な実行が求められる。
約40の先進国・地域に削減義務を課す京都議定書をめぐっては,13年以降の温暖化対策に「空白」が生じることを懸念する途上国が延長を要求し,日本が強く反対していたが,結論を来年へ先送りした。
決議案は,削減策に空白が生まれない形で結論を出すと明示しており,議定書の改正手続きや各国の批准手続きに必要な時間を考慮すると,来年末のCOP17で結論を出す必要がある。
議長国メキシコは,9日夜から各国の閣僚らと断続的に協議を続け,意見調整した。対立が続いていた削減策をめぐり,中国やインドなどの新興国が削減の検証制度を設けることを受け入れ,決議案がまとまった。ただ詳細な制度設計や法的な位置づけについては先送りされ,先進国との対立は決議後も続きそうだ。
決議案によると,先進国は削減目標を掲げ,排出量を毎年報告。途上国は、経済発展で排出量が増える余地を認められながらも,抑制に向けた計画をつくる。2年に1回,国際的な検証を受けるが,抑制策が妥当かどうかは評価せず,罰則は設けない。
洪水や干ばつなど温暖化による被害を受けやすい途上国への支援を強化するため,新たな機構を創設。資金支援のために基金も設ける。
先進国と途上国の利害も絡み,毎回激しい議論が繰り返されており,世界各国が協調して温暖化対策を進めることは本当に難事業で,忍耐強く検討を重ねて理解を深めていくしかないようです。
3月10日;迷走する鳩山内閣の25%削減案 ,国内排出量取引だけが問題にされているような報道がなされていますが・・,今国会で成立させる必要があるのでしょうか?
A)産業界からも,連合からも慎重論が出された
基本法案が3月中にも国会に提出される見通しとなって,日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体が「(削減に必要な)個別政策の中身や効果を示した 上で国民の声を直接反映するプロセスを丁寧に積み重ねること」を求めたのに続いて,日本鉄鋼連盟など9つの産業団体は2月26日、政府が今国会に提出予定の「地球温暖化対策基本法案(仮称)」に反対する共同意見書を発表し ,鳩山内閣の最大の応援団である連合からも,地球温暖化対策基本法案(仮称)に盛り込まれる国内排出量取引制度について注文が付いた。
B)IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書の信憑性が問われだした
鳩山内閣が25%削減の根拠とした,IPCCの報告書の記述間違いや幹部にまつわる金銭問題などが相次いで浮上し、報告書の信ぴょう性が問われる事態となり,地球温暖化に対する懐疑論が再燃している。
このような周りの状況を考慮した小沢環境大臣は,国民の意見を聞く機会を設けて最終案を決定するといっているようですが,どのようのなっているのか,議論が見えていません。
C)地球温暖化の原因が,人間活動による温室効果ガス排出量の増加だけと結論付けることを疑問視する研究者も多い
私たちの住んでいる地球は,何回もの氷河期と間氷期を繰り返してきており,地質学や古生物学の研究者を中心に,現在の地球温暖化もその一環だと考える人が多いのです。
根拠となっている大きな理由の一つは,セルビアの地球物理学者ミランコビッチが,近くの惑星からの引力を考慮して地球の公転軌道や地軸の傾きといった天文要素の永年変化 を計算して地球が受け取る日射量を推定すると,「ミランコビッチサイクル」と呼ばれている周期が2万年〜10万年スケールの日射量変動が起こることを明らかにし,1920年に「氷期の原因に関する天文学説」を発表した。その後の海洋底堆積物の化石有孔虫の酸素同位体比の研究 とをドッキングさせることによって「氷河期と間氷期の繰り返し」を見事に説明できることが明らかになったことです。
その概略を紹介しておきます。(図は,岩波講座;地球惑星科学11「気候変動論」P133,図4.10を拝借 させていただきました)
下の図は,過去180万年間のミランコビッチ理論で計算した日射量の変化(上図)と,海洋底コアの酸素同位体比から求めた気候変動(下図)です。
直感的にも,日射量も気候変動も周期的であることは明らかですが,二つの変動にどれだけ共通性があるかを確かめるため,図中に示したA,B,Cと 60万年毎に区切って周期解析した結果を下図に示しました。どのような周期成分が卓越しているかを示した図ですが,日射量と酸素同位体比は 約2万年,4万年,10万年の共通した卓越周期成分をもっていることがわかりますす。
地球の気候変動の歴史は,地球に到達する日射量の変動によって支配されてきたと考えるのが主流となった一つの根拠です。
さらに,南極大陸ボストーク基地氷床コアから求められた過去16万年間の気温と,空気中に含まれるメタンガス濃度,二酸化炭素濃度の変動も,下図に示すようにミランコビッチサイクルに対応する2万年〜10万年スケールの周期で変動していることも明らかになった(図は岩波講座;地球環境科学3「大気環境の変化」P37,図1.19を拝借させていただきました)。
大気中の温室効果ガス濃度は,気温の変動に連動して変化することの証明です。 人間活動が存在しない時代から,地球の気温と温室効果ガスは常に連動して変化してきたのです。過去の歴史は,むしろ気温が温室効果ガスを支配してきたことを予測させています。
2月10日;太陽黒点も現れ始めたので,今回は 地球温暖化と太陽活動について自然科学的な話題を取り上げます。
太陽活動が極小期に入った一昨年頃から太陽黒点数は急速に減少し,昨年は黒点が全く現れない日が長く続いたりしたため,太陽活動が衰弱していく前兆ではないかと疑う研究者も現れ た。太陽活動の衰弱が今後の地球温暖化にも影響するのではないかとの報動もありました。
今年に入ると数は少ないながらも,太陽黒点も観測されるようになり黒点領域でフレアーも観測されるようになりました。2,010年2月8日に観測された太陽表面の様子を右の図に示 しました。白く光っているところが黒点領域で発生したフレアーです。太陽活動極小期も例年通り収束に近づいてきたことを示すものです。
太陽活動と気温との関係は古くから議論されている問題ですが,いまだに決着はついておりません。太陽黒点数が少なくなると,太陽放射が減少することが確か められたのは最近のことで,太陽活動が地球スケールの気候に影響するかとなると,なかなか決着のつかない難しい問題なのです。
過去に黒点数が気候に影響した例として知られているのが,下の図に示した「マウンダー極小期」と呼ばれている期間です。図から明らかなように約100年間にわたって黒点数が極端に少なくなった時期で, この時期は日本はじめ,世界中で最も寒冷化が進んだ時期と一致していることがわかっています。マウンダー極小期がなぜ起こったのかについては,謎のままです。
太陽黒点数と太陽放射がどのように関係しているかについては,太陽の科学(4)太陽光は不変ではないに説明してあるので,関心のある方は参考にして下さい。