(D)春一番

 

 春一番;春の訪れを告げる南よりの強風のことで,日本海で発達した低気圧に向かって,立春後最初に吹いた南よりの強風を春一番と呼んでいるのです

春一番の由来; 1859年(安政6年)2月13日,五島列島沖に出漁した壱岐郷ノ浦の漁師53人が強い突風にあって遭難してから,郷ノ浦の漁師の間で春の初めの強い南風を,春一または春一番と呼ぶようになったのが始まりで, 1950年代後半よりマスコミで使用され一般化した(気象の事典,平凡社,より)。

春一番は暖かい強風である理由;日本海で発達した低気圧に向かって吹き込む南よりの強風は太平洋上の暖かい空気です。

春一番が観測されやすい地方;温帯低気圧は,南方の日本海上で発生するため,西日本や東日本で観測されやすく,北日本ではあまり観測されません。

関連すること;春一番は,海および山での遭難を引き起こす危険もあるが,毎年必ず吹くというものでもありません。なお,春一番に続く南寄りの強風を春二番,春三番と呼んでいます。

<平凡社,気象の事典>には春一番の吹く平均の日は,佐賀で 2月21日,東京で2月22日頃と書いてありますが,年によっても違います。

 2001年2月28日に,南九州から関東地方にかけて春一番が吹いた日の天気図(左)と雲写真(右)を図1に,各地で観測された最大風速と最大瞬間風速を表1に示した。

 日本海にある低気圧に向かって,太平洋上の大きな高気圧から南よりの暖かい風が吹きこんだため,日本列島の各地で<春一番>が観測されたのです。

     

      図1 春一番が吹いた2001年2月28日の天気図(左)と雲写真(右)

 

表1 各地の最大風速と最大瞬間風速

  地点   最大風速   最大瞬間風速
  福岡     8.9(SE)      17.6(ESE)
  松江     11.5(SSW)      22.8(SSW)
  鳥取     13.2(S)      24.5(SSW)
  金沢     12.0(SW)      22.O(SW)
  福井     11.5(S)      19.2(SSE)
  富山     10.9(S)      21.2(SSW)
  東京   ―      21.3(SW)
  千葉   ―      20.8(SW)
  横浜   ―      22.1(W)

   

“暖かい日と寒い日を繰り返しながら春は訪れる”

 日本海の温帯低気圧に向かって吹き込む暖かい南風 「春一番」は春の訪れを告げますが,温帯低気圧が通過した後には,日本列島を寒冷前線が通過し,北よりの風が吹く。北風はまだまだ冷たいため,急に寒さがぶり返します。

 調べてみると,この時期は,約 一週間程度の周期で温帯低気圧が日本列島を通過するので,「寒い日3日,暖かい日4日」をくり返しながら,冬は遠ざかっていくという意味で“三寒四温”と呼ばれています。

 4月に入ると,揚子江気団から東進してきた移動性高気圧と,東シナ海で発生した低気圧が交互に通過するようになります。春の移動性高気圧は,発達しながら通過することが多いため,日本付近は高気圧の後面(中心より西側の領域)に入る期間が長くなります。高気圧の後面は,南から暖かくて湿った空気が入りやすいことに加え,中国北部から細かい黄砂の塵がやってくるため,視程が悪くなり,空がかすむ日が多くなるのです。春本番です。