トピックス

 

 自然科学分野で,新しい発見や,興味ある現象など,話題になったこと等を,随時紹介していこうと思っています。

<2,012年>

10月2日;太陽極域磁場の長期変動を解説したので参考にしてください。

9月13日;『太陽が冬眠? 周期的活動に異変,地球に低温期到来か、太陽の磁場の変化』(朝日新聞デジタル,2012年4月20日)を初め、マスコミで<太陽活動に異変(?)が起こっている>という記事がにぎわいました。

  発信元は,国立天文台と理化学研究所の研究者を中心とした国際研究チームが、『太陽観測衛星「ひので」で行っている太陽極域の磁場観測で、@南極では反転の兆候が全く見られないのに、北極では予想より約1年早い2012年1月に磁場がほぼ0の状態に近づき、極性反転が始まろうとしていることを発見した』ことでした。

  この発見が、マスコミの記事では、『太陽が冬眠?、太陽活動が低下、地球に低温期到来か?』といったセンセーショナルな<見出し>になったのかが気になって調べてみました。  発表の中で、最近の太陽活動周期(下図)が、2007年から2010年にかけて太陽黒点数が極端に少なくなり、1996年末の太陽活動極小期から次の極小期間までの期間が12〜13年で、平均的な太陽活動周期11年より長くなっている事に注目し、両者が関連しているのではないかと推測しているのです。

  

  さらに飛躍し、現在の太陽と同じような状況が、地球が寒冷であったといわれているマウンダー極小期(1645〜1715年)やダルトン極小期(1790〜1830年)の開始前後に発生していたとまで推定しているのです(下図)。

 

  マウンダー極小期やダルトン極小期には、観測量は少ないながらも黒点の観測は行われていたが、現在の様な太陽磁場観測などは到底不可能な時代であり、当時の太陽の状況はあくまでも想像に過ぎません。

  ドルトン極小期についてはともかくとしても、マウンダー極小期は50年以上にわたって黒点がほとんど現れないと言う異常時期であり、これと似ている太陽の状態ではないかという論理には恐れ入りましたと言うほかありません。

  マスコミ報道は、自然科学的に吟味する必要はないのかもしれませんが、読者受けするセンセーショナルな発表があると、あたかも真実であるかのように、記事にすることには抵抗を感じざるを得ません。

  ずいぶん前に引退した私が言うことではないと知りつつ、最近の『電離層観測から地震予知可能?』、『富士山噴火が・・・』・・・・・と言ったテレビ放送や、マスコミ記事が氾濫すると、こんなことで世間を騒がせることがマスコミの役割なのかと恐ろしくなってしまい、つい余計なことを書いてしまいました。

<2,011年>

12月21日;紹介が遅くなってしまったが,2011年10月,独立行政法人 国立環境研究所が「2011年春季の北極上空で観測史上最大のオゾンが破壊された」と記者会見で報じた。

 記者会見で配布した内容をそのまま,下記に転載します。

(筑波研究学園都市記者会配付)

 国立環境研究所ら9カ国による研究グループは、米国の人工衛星搭載センサーMLS、CALIPSO、OMI,及び8カ国の北極圏におけるオゾンゾンデ(*1)観測により、この冬から春にかけて北極上空で起こったオゾン破壊は観測史上最大規模であり、初めて南極オゾンホールと匹敵する規模のオゾン破壊が起こっていたことを確認しました。国立環境研究所は、ロシアにおけるオゾンゾンデ観測を分担しました。モントリオール議定書に始まるフロン類の排出規制の効果により大気中の塩素総量はすでに減少に転じていますが、今冬の北極圏上空では低温状態が長期間にわたって継続したため、オゾンを破壊する不安定な活性塩素の増大が継続し、高度18-20 kmでのオゾン破壊が80%まで進んだことが確認されました。今後もこのような規模の北極上空でのオゾン破壊が起こる可能性は否定できません。

 なお、本研究結果は、日本時間10月3日(月)午前2時に「Nature」電子版に掲載されました。

 (*1] オゾンゾンデ:オゾンを測定する装置を載せた気球によって、地表付近から地上約30 kmまでのオゾン量を直接観測する機器。

<補足資料> 北極上空のオゾンホール;

 右図が,米国Aura衛星搭載オゾンセンサーOMIが観測した、2011年3月25日の北極上空のオゾン全量の値を示したものです。

 図の中で、紫色の275 DU(ドブソンユニット)以下となっている領域が、北極点から北欧・スカンジナビア半島〜ロシア北部にかけて広がっていることが分かります。

 このような低オゾン領域が、2011年3月から4月初めにかけて、1カ月以上に渡って北極上空に出現しました。また、250 DU以下となるような領域も、観測史上初めて北極上空に出現しました。

<北極上空でオゾン破壊が急速に進行した理由>

 南極オゾンホールの研究から,オゾンホールの発達には、「冬季成層圏の高度15〜25 kmの気温が零下80度以下にまで下がると発生することがわかっている,水蒸気と硝酸や硫酸などからなる極成層圏雲(Polar Stratospheric Cloud: PSC)の生成 」が不可欠なのです。

 (詳細については,(7)オゾンホールが出現するのは,春先の南極上空だけなのはなぜ?) を参照して下さい)

 これまで,「北極域の成層圏は、海陸分布の違いから南極に比べて冬季でも10度くらい気温が高いため,南極ほど顕著なオゾン破壊は起きない」と考えられていたのです。

 2011年は これまでの常識を打ち破るように,「低緯度からの暖気などが北極に入ってくるのを阻害する極渦が,2月から4月にかけ過去最大の値を示し,特に3月中は南極の値を超える大きな値で推移した」ため,異常低温がこれまでになく長期間(約4カ月間)持続したのです。

 北極成層圏の気温も,2011年は”想像を絶する”現象を示し,これからも起こりうる可能性があり,北半球のオゾン層破壊にもこれから注目すべきことを示しているのです。

<自然現象は激しさを増している?>

2011年は東日本大地震,異常なほどの台風接近・上陸による大災害,・・・・・・など,異常尽くめの自然災害の連続でしたが,上空の成層圏の気象もこれから大きく変動する危険性があることの警告と受け止めるべきです。

 これまでの常識では判断できない”自然現象”が起こりうると覚悟すべき時期なのかもしれません。

12月6日;YOMIURI ONLINE(2011年12月6日16時11分 読売新聞)で,想像図と一緒に「生きるのに最適な惑星、NASA発見 」と言う記事を見つけたので,そのまま転載して紹介します。

 【ワシントン=山田哲朗】米航空宇宙局(NASA)は5日、これまでで最も生命の存在に適していると考えられる惑星を見つけたと発表した。  地球から600光年離れた「ケプラー22b」と呼ばれる惑星で、直径は地球の2・4倍。太陽とよく似た恒星の周りを290日で公転しており、気温は22度前後と推定される。  NASAはケプラー宇宙望遠鏡で一部の方角の観測を続けており、同日時点で2326個の惑星候補を発見。うち48個が、熱すぎず冷たすぎず、生命に適当な範囲の温度に収まっていると判定した。ケプラー22bは、この範囲の中でも真ん中で、生命にちょうどいい環境らしい。 右に示したのが,ケプラー22bの想像図。